さて「化石ってどうやって見つけるの?」シリーズも最終回となりました。これまで、化石を見つけるための方法についてお話してきましたが、今回は「そもそも、“化石かそうじゃないか” をどうやって判別するの?」という、根本的な問題についてお話したいと思います。
博物館の学芸員の1つの仕事として、お客様の質問にお答えする、という役割があり、そのなかで、時々化石を鑑定してほしいというご依頼を受けます。
このとき、学芸員はいったい、何をもって持ち込まれた「岩石」を化石かどうか見極めるのでしょうか。
化石を判別する最も重要な手がかりは、「表面の形と構造」と「内部構造」です。
「表面の形と構造」とは、ようは見た目です。ただし、ガイコツの形をしているからといって、本当に頭骨の化石とは限りません。これを単なるガイコツ形の石なのか、本当に人類の頭骨の化石かを判別するには、そもそも頭骨の構造を知っていなければなりません。頭骨は、1つの骨からできているわけではなく、たくさんの骨のパーツが組み合わさってできています。それぞれのパーツの形、つなぎ目や関節の形などが重要な判断材料となります。それらが、今まで知識として蓄えてきた頭蓋骨の形や構造と一致するかどうかを見ていきます。
もう一つの手がかり「内部構造」も大切な情報です。化石になっていても、生きていた時の内部構造は残っているからです。例えば、骨であれば、骨の中にある海綿状の構造や、骨の中心にある骨髄も化石になっても残っています。植物であれば、葉脈がちゃんとあるか、年輪があるか、維管束があるかなども手掛かりとなります。
恐竜の骨(おそらく四肢の一部)アメリカ 白亜紀後期
断面の中心部には骨髄が見える。骨の表面を覆う緻密骨(ちみつこつ)もよく残っている。
アロウカリア(ナンヨウスギ)の球果(まつぼっくり)の化石
右は表面、左は断面
表面には、松ぼっくりの鱗片の凹凸が残り、断面には、鱗片が重なる様子と、間に種が見える。
もちろん、風化が激しかったり、あまりにも断片的であったりすると見分けがつきにくいこともありますが、その場合は、発見された場所に化石を含む地層が分布しているのか、その地層の時代はいつか、などを総合的に考えて判断します。
私はよくお客さまに、恐竜の骨のかけらを実際に手に取って見ていただくのですが、多くのかたが、「これ、よく化石ってわかりますねー」とおっしゃいます。確かに、これが庭先の砂利の中にあったら、見つけることはまずないでしょう。恐竜のかけらとわかるのは、恐竜がすでに見つかっている地層で発見したからであり、またその地層の調査で、それまでに同じようなかけらをたくさん見てきているからなのです。
恐竜の骨のかけら アメリカ 白亜紀後期
これほどのかけらになると、ふつうの岩石と見分けがつきにくいが、よくみると、骨の内部の、海綿骨が見える。ここまでかけらだと、恐竜の種類も骨の部位もわからない。
このように、化石か化石でないかを判断するためには、観察眼と、知識や経験が必要です。これから化石を見つけてみたいと思っているかたは、まずは博物館などでたくさん化石を見たり、今生きている動物の骨や植物をよく観察したりしてみてはいかがでしょうか。
三葉虫の化石 モロッコ オルドビス紀
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。